今までは水洗後、通常のオートクレーブ滅菌のみを行っていた。ところが、このスケジュールでは非常に稀な疾患CJD(クロイツフェルド・ヤコブ病、通称ヤコブ病)あるいはバリアント型狂牛病の原因病原体であると言われているプリオンを完全に消滅させることはできない。(オートクレーブのみでも弱毒化するとは言われているが)
そこで、かねてから滅菌スケジュールの改善を図っていた。実際、CJDは非常に移りにくい疾患で歯科の手術から移る可能性は殆ど無いと考えられる。(脳外科以外では一般外科でもここまではやっていないようだ)けれども、より高度なレベルを目指すにはプリオンも制圧したい。
文献を参照すると、プリオンを不活性化するには熱した高濃度界面活性剤、高濃度次亜塩素酸、高濃度水酸化ナトリウムなどが都合が良いようだ。このうち高温高濃度界面活性剤はプリオン蛋白の構造変化だけなので、原理上再活性化(生き返る)懸念が払拭できない上に取り扱いが困難だ。また次亜塩素酸は日頃歯科臨床で大量に使用している殺菌剤なので簡単だけれども、先日トライしたところ、高価なインプラント用ドリルが錆びてしまい、悲しい気持ちになった。
そこで1N(1規定)水酸化ナトリウム溶液に使い古しのドリルでトライしたところ、どうやら医療用ステンレスは侵されないようだ。そこで本日AQBの手術用品一式に水酸化ナトリウム処理を試みた。今のところ錆びの発生も無く順調だ。
1N水酸化ナトリウムの作り方は次の通り。精製水900ml程度をビーカーに用意。水酸化ナトリウム40g(1モル)を計量する。水酸化ナトリウムは吸湿するので直ちにビーカーの中の水にこれを静かに加え、攪拌し、溶解する。最後に精製水を約100ml加えて全体を1リットルにして完成。これを逆に水酸化ナトリウムに水を加えると激しい溶解熱で撥ねたりして危険なので注意。1リットルの水に水酸化ナトリウム41g程度を加えても概ね1Nになるので実用上はこれでも問題ない。
水酸化ナトリウムは500gの試薬級が薬局などで買える。値段は500円以下。これで12リットル程度作れる。
出来上がった溶液のうち500ml程度をタッパーに入れる。これに器具類をプラスチックの籠にいれて室温で一時間浸漬する。その後、水洗してオートクレーブにかける。この溶液は頻度にもよるが二週間から一ヶ月程度は持つと思われる。投入した有機物に含まれる塩や酸などによって効力が低下する。また空気中の二酸化炭素を吸収してやはり効力が低下する。
文献は調べていないけれどもほとんど全ての有機物を加水分解してしまう1N水酸化ナトリウムの滅菌能力は強烈でこの環境で生き延びる事のできる微生物はおそらく存在しないだろう。
浸漬後の水洗はかなり念入りにしないと、器具の可動部に水酸化ナトリウムが濃縮して固着したりするので注意。また目に撥ねると失明の危険がある。万一入ってしまった場合には大量の水で洗浄してホウ酸などの弱酸で中和し、ただちに眼科医を受診する。本当は水ではなく炭酸水などで洗浄すると、水酸化ナトリウムが中和され、より綺麗になると思われるが、こちらはまだ試していない。
(文:窪田敏之)
2011年11月30日水曜日
2011年7月15日金曜日
チタンメッシュ法による歯槽骨造成法(その1)
インプラントで患者さんの骨の量が不足する場合、メンブランを使用して骨の増殖方向と粘膜の増殖方向を制御することによって骨を造成するやり方(GBR法)はわりと一般的だ。
しかし、実際には非常に複雑な術式と数ヶ月の待ち時間、多大な費用をかけても復活する骨の量は精々2-4mmと、まぁやらないよりは良いけれども、全面的に頼れるかというとそうでもないような微妙な術式だ。
しかもメンブランは多くの場合バイオイナートで生体とは殆ど干渉しない。このため固定に難があり、スリップして膜が口腔内に露出する、など面倒なトラブルの種になりやすい。
メンブランによるGBR法の要点は治癒も増殖も速い上皮細胞(粘膜)の傷口への侵入を阻止し、成長の遅い骨組織が伸びてくるのを待つ、という意味合いでの「ティッシュ・コントロール」だ。ここで、最近チタンメッシュを活用した術式が台頭している。チタンメッシュをあたかもメンブランのようにして使うのだ。
チタンメッシュがメンブランと比較して大きく優れているのは三点。
1.耐圧性があるので、骨形成に必要な空洞を長期間保つことができる
2.生体親和性が良い
3.賦形性に優れ、加工が容易で手術も比較的簡単
先日のセミナーで見せてもらった症例では、これまでの常識では絶対に治せないと思われるケースでも続々インプラントを成功させ、ここまで劇的に回復するものかと驚かされたものだ。
この治療法、非常に先進的で日本ではもちろん、世界でもこなしているインプラント医はまだとても少ないと思われる。しかし今目の前で困っている患者さんを、チタンメッシュ法を使用すれば救えるかもしれない。
私もまだ実習をしただけなので、初めは身内からやってみようと思う。しかし実際術式はそれほど複雑でもなく簡単だと思う。それにつけてもこういう新術式を初めて思いつく医者は立派だと思う。以前よりも術式が簡単になり、その上治療効果がでるのだから素晴らしい。
(つづく 文:窪田敏之)
しかし、実際には非常に複雑な術式と数ヶ月の待ち時間、多大な費用をかけても復活する骨の量は精々2-4mmと、まぁやらないよりは良いけれども、全面的に頼れるかというとそうでもないような微妙な術式だ。
しかもメンブランは多くの場合バイオイナートで生体とは殆ど干渉しない。このため固定に難があり、スリップして膜が口腔内に露出する、など面倒なトラブルの種になりやすい。
メンブランによるGBR法の要点は治癒も増殖も速い上皮細胞(粘膜)の傷口への侵入を阻止し、成長の遅い骨組織が伸びてくるのを待つ、という意味合いでの「ティッシュ・コントロール」だ。ここで、最近チタンメッシュを活用した術式が台頭している。チタンメッシュをあたかもメンブランのようにして使うのだ。
チタンメッシュがメンブランと比較して大きく優れているのは三点。
1.耐圧性があるので、骨形成に必要な空洞を長期間保つことができる
2.生体親和性が良い
3.賦形性に優れ、加工が容易で手術も比較的簡単
先日のセミナーで見せてもらった症例では、これまでの常識では絶対に治せないと思われるケースでも続々インプラントを成功させ、ここまで劇的に回復するものかと驚かされたものだ。
この治療法、非常に先進的で日本ではもちろん、世界でもこなしているインプラント医はまだとても少ないと思われる。しかし今目の前で困っている患者さんを、チタンメッシュ法を使用すれば救えるかもしれない。
私もまだ実習をしただけなので、初めは身内からやってみようと思う。しかし実際術式はそれほど複雑でもなく簡単だと思う。それにつけてもこういう新術式を初めて思いつく医者は立派だと思う。以前よりも術式が簡単になり、その上治療効果がでるのだから素晴らしい。
(つづく 文:窪田敏之)
2010年1月5日火曜日
当院で使用しているインプラント、ITIとAQB、その他のインプラント
ちなみに当院では現在ITIとAQBを使用している。しかしながら、頻度はITIのほうが多い。というのもITIは歴史が古くパーツが充実しており、適用範囲が非常に広いからだ。一方AQBは限られた症例ながら、ワンピース一回法(即時加重)という手軽さが良いところだ。
実際、上顎にはなかなかAQBのワンピースを使う気持ちになれないが、下顎・遊離端ではない・骨密度が大きい場合には結構有効だろうと思う。
ところで、アンキロスという製品があるが、これはこれまでのブローネンマルクから始まった解剖学的形態のアナログ型のインプラントとは異なって、非解剖学的形状のインプラントだ。一般に出回っているエビデンスを当院独自の基準で評価してみようと思っているが、これまでのところ、なかなか筋の良さそうな製品という感じを受けており、進めてみようかなと思っている。
その他、インプラントは高いものを一本打つよりも廉価なものを二本打ったほうが、力学的にも危険分散の面でも有利と考えられるので、当然ながらインプラントシステムの価格も性能のうち、という事になる。最近は中国や韓国のメーカーが力をつけてきているので楽しみだが、本年の前半はアンキロスを調べてみようと思っている。
ところで、ジルコニアは通常補綴に使用されているが、これをインプラント体に使用することもできる。というのもジルコニアはチタンほどではないけれども、かなりの骨親和性があり、オッセオインテグレーションも可能なようだ。 実際、インプラントにも人工の歯周ができる訳で、その際には歯周病原因菌群のインプラント体への付着性が問題になる。すると鏡面チタンよりも鏡面ジルコニアのほうが歯周炎への耐性が良い可能性も無いとは言えない。その上最大の利点はやはり美しいという事だ。歯根の色調は金属光沢ではなく、自然の歯牙に近い白い色になる。スペインには既にセラルートという会社があり、同名のインプラント体を販売している。
エビデンスはまだ見つけていないのだが、天然歯よりもチタンのオッセオインテグレート型インプラント体のほうが歯周炎になりにくいような気がするのだが、どなたか文献をご存知ではないだろうか?
(文:窪田 敏之)
実際、上顎にはなかなかAQBのワンピースを使う気持ちになれないが、下顎・遊離端ではない・骨密度が大きい場合には結構有効だろうと思う。
ところで、アンキロスという製品があるが、これはこれまでのブローネンマルクから始まった解剖学的形態のアナログ型のインプラントとは異なって、非解剖学的形状のインプラントだ。一般に出回っているエビデンスを当院独自の基準で評価してみようと思っているが、これまでのところ、なかなか筋の良さそうな製品という感じを受けており、進めてみようかなと思っている。
その他、インプラントは高いものを一本打つよりも廉価なものを二本打ったほうが、力学的にも危険分散の面でも有利と考えられるので、当然ながらインプラントシステムの価格も性能のうち、という事になる。最近は中国や韓国のメーカーが力をつけてきているので楽しみだが、本年の前半はアンキロスを調べてみようと思っている。
ところで、ジルコニアは通常補綴に使用されているが、これをインプラント体に使用することもできる。というのもジルコニアはチタンほどではないけれども、かなりの骨親和性があり、オッセオインテグレーションも可能なようだ。 実際、インプラントにも人工の歯周ができる訳で、その際には歯周病原因菌群のインプラント体への付着性が問題になる。すると鏡面チタンよりも鏡面ジルコニアのほうが歯周炎への耐性が良い可能性も無いとは言えない。その上最大の利点はやはり美しいという事だ。歯根の色調は金属光沢ではなく、自然の歯牙に近い白い色になる。スペインには既にセラルートという会社があり、同名のインプラント体を販売している。
エビデンスはまだ見つけていないのだが、天然歯よりもチタンのオッセオインテグレート型インプラント体のほうが歯周炎になりにくいような気がするのだが、どなたか文献をご存知ではないだろうか?
(文:窪田 敏之)
2010年1月4日月曜日
謹賀新年 2010
あけましておめでとうございます。
さて、昨年から始めたこのブログですが、本年の前半は主にインプラントと矯正に集中して検討してゆきたいと思います。ある患者さんが歯科疾患や先天的な形態などによって機能性・審美性とも大きな問題が生じていたとしても、最新の歯科の医療技術をもってすれば、かなりの程度快適な結果が得られるはずだ。
だが、昨今歯科医療の領域も広くなりすぎ、さらには専門化が進んで他領域でなにが起こっているのかが判りにくくなっているのも確かだ。さらに科学技術の進歩に伴って歯科医療の技術も急速に進化している。
しかし人体というものは有機的に全体の調和で成り立っているもので、特定領域だけ解決しても患者さんの生活の向上には繋がらない事もありうる。これからの歯科医師はもちろん何かの専門を持っている事は重要だが、それだけではなく歯科や隣接医科、全身状態との調和の中で最善の状態に持ってゆくにはどのようなテクニックを駆使すれば良いのかといった視野の広さもまた求められていると思う。
そんな訳で2010年第一弾は矯正とインプラントの関係を少し調べてみようと思う。
本年もよろしくお願い致します。
(文:窪田 敏之)
さて、昨年から始めたこのブログですが、本年の前半は主にインプラントと矯正に集中して検討してゆきたいと思います。ある患者さんが歯科疾患や先天的な形態などによって機能性・審美性とも大きな問題が生じていたとしても、最新の歯科の医療技術をもってすれば、かなりの程度快適な結果が得られるはずだ。
だが、昨今歯科医療の領域も広くなりすぎ、さらには専門化が進んで他領域でなにが起こっているのかが判りにくくなっているのも確かだ。さらに科学技術の進歩に伴って歯科医療の技術も急速に進化している。
しかし人体というものは有機的に全体の調和で成り立っているもので、特定領域だけ解決しても患者さんの生活の向上には繋がらない事もありうる。これからの歯科医師はもちろん何かの専門を持っている事は重要だが、それだけではなく歯科や隣接医科、全身状態との調和の中で最善の状態に持ってゆくにはどのようなテクニックを駆使すれば良いのかといった視野の広さもまた求められていると思う。
そんな訳で2010年第一弾は矯正とインプラントの関係を少し調べてみようと思う。
本年もよろしくお願い致します。
(文:窪田 敏之)
登録:
コメント (Atom)