2009年11月28日土曜日

ジルコニアとグラスファイバーのハイブリッド型ファイバーポストデビュー(白水貿易)

グラスファイバーポストについて別稿で書いたが、当然ながらポストの材料とそのポストと歯の隙間を埋めるコンポジットレジン、さらにはコンポジットと歯質・グラスファイバーとコンポジットの接着性を担保する接着剤の性能、と全ての要素が重要であって、これらの要素が高性能化するとシステム全体の性能も向上するはずだ。

さてファイバーはファイバーコアシステムの最も重要な要素で、概ね弾性率は象牙質に近いか、若干大きめ、曲げ強さは大きいほど良い。そうなると当然ながら単純なガラスのファイバーよりもっと高強度の材質があれば、そのほうが良いのだ。

先日、東京デンタルショーへ見に行ったところ、白水貿易さんが発売開始したジルコニアとガラスファイバーをハイブリッドにした「インテグラ ファイバー ポスト」という製品があった。ジルコニアは高強度で有名なのでこの細い棒やファイバーと合わせたら高強度が期待できるのだろうか?もしそうなら嬉しい。カタログ値によれば軸上の弾性係数が52GPa、曲げ強度は1650Mpa、せん断強度が64MPaという事だ。(できれば曲げ弾性係数も測定して欲しかったかな)そしてグラスファイバー表面にはシラン化処理がしてあるようだ。しかしジルコニアの混ぜ方がいまひとつカタログからでは判らない。ジルコニアをガラス化してファイバーにするのは難しそうだが。

現在当院で使用しているのはトクヤマデンタル製のファイバーポストだ。またつい先日まではサンメディカル製を使用していた。他の製品に関しても追々強度などを調べてみようと思う。

(文:窪田 敏之)

2009年11月18日水曜日

上海デンタルショー (その2)

上海デンタルショーは凄い熱気だったわけだが、こういう熱気をもった雰囲気を作り出す事に成功しているのだから、中国の経済系の指導部の力はたいしたものだ。

日本はこういった状況から学ばなくてはなるまい。歯科技工所も多数設立されている。人数が巨大で30人ー50人などというのはアタリマエ(日本では最大級のサイズだろう)

大きいところだと2000人!規模の技工所が数軒あり、事務所の写真を見ると、まるで大規模の工場か大学のような大きさ。普通の歯科技工専門学校が4-5軒スッポリ吸収されてしまうサイズだ。

これで世界に技工物を提供している。技術レベルも日本の平均と比較して決して低くはない。むしろ規模のメリットを生かし、エリートクラスを養成し、特別チームは世界のトップクラスの技術を持っている。見えない義歯バルプラストや、矯正用のテンプレートは言うに及ばず、日本でもまだ始まったばかりのジルコニアを殆どの技工所で作成しているのには驚いた。これでは日本の技工所は全く太刀打ちができない。それこそ巡航ミサイルに竹槍で立ち向かうようなものだ。

ここまで日本の歯科を荒廃させ、国民の口腔衛生を先進国最低のレベルにしてしまい、国際競争力も奪ってしまった政治と厚生官僚、それに日本歯科医師会の歴代執行部の罪は重い。

それに今回驚き、嬉しかったと供に心が重くなる出来事があったのだ。それは中国の「品質」である。中国は日本とは異なる遣り方で品質を追求しており、最近の中国製品の品質は急速に向上している。たぶん、近日中に日本に追いつくだろう。私は中国に古い友人もおり、中国の発展を見てきたので、ついにここまで来たのか、という嬉しさがある反面、「中国品質」等と嘯いて油断をしている我が国のていたらくを見ると心配でならない。日中間の良好な関係は協力しあいながら、また良きライバルとして競争もする、ということで一方が強すぎるのは良くないのだ。

幸い、今ならまだ為替の違いがあるので盛り返す事はできると思う。頑張らなくてはならない。

(文:窪田 敏之)

2009年11月2日月曜日

上海デンタルショー(Dentch China 2009)(その1)

10月27日から30日まで上海のデンタルショーを訪問してきた。中国の歯科事情は夕暮れ色の日本とはまったく異なり、非常に熱気があり日の出の勢いだ。日本のデンタルショーだと客の数も少なく、展示も綺麗になっており、時たま興味を持った先生が尋ねると説明員が対応する、といった感じだ。ところが上海のデンタルショーは大混雑で、まるで通勤ラッシュのような状態だ。

会場も巨大で、全部で3フロアを使い切っている。一階は概ね国際的企業や、大手企業が巨大な美しいブースを出展している。これは日本と同じだ。ところが二階三階では中国の歯科器材メーカーや中小ディーラーがブースを構えており、ここでは展示即売を行っている。雰囲気は展示会というよりは市場、それも年末のアメ横のような感じになっている。

客も世界各国から来ていて、中東系、インド系、オセアニア系、ヨーロッパ系、日本人、韓国人。言葉も中国語だけでも普通話以外の言葉もあるし、スペイン語、ロシア語、英語、韓国語、ドイツ語、日本語・・・・さまざまな言葉が入り乱れて飛び交う非日常の空間だ。共通言語は中国語か英語。こうなると「通商言語」としての英語は威力を発揮する。

各国の人々は人民元の札束を支払いながらダンボール箱単位で歯科器材を買い付けている。帰りは数人掛りでダンボール箱を手押し車に載せて会場から運び出して、配送の手配を行っている。二日目の午後になると、売り切れ御礼のお店が続出。会期三日目を残して早々とブースを閉じてしまう会社、あまりの忙しさに疲れて居眠りする社員・・・・・・・・いやはや。

中国のこの熱気は本当に凄い。今や「世界の工場」となった中国の片鱗を垣間見たような気がした。4月には韓国のソウルデンタルショーを訪問したが、その時にも熱気は感じたが、中国はさらに熱かった。

(文:窪田 敏之)