2018年4月30日月曜日

第18回国際NCT学会(台湾大学)での発表内容案「NCT時の歯科用ジルコニアの中性子吸収と放射化」

筆者は歯科用材料の中性子吸収と放射化について一貫して研究している。

今回は歯科補綴で最近シェアが増加中と考えられるジルコニアセラミックの放射化を計算によって評価した。

ジルコニアは酸化ジルコニウムZrO2を主体に、安定化のためのイットリア、不純物としてアルミナ、シリカ、酸化鉄、酸化ナトリウムなどが含まれる。

この他不純物としてジルコニウムの同族元素であるハフニウムを含むものがある。このハフニウムはジルコニウムと化学的な性質が酷似するため分離に手間がかかる。

今回の評価では、これら不純物のうちハフニウム177が熱中性子領域で372バーン、またハフニウム178も88.5バーンの捕捉による吸収量が大きく、僅かの不純物含有量で、中性子ビームに対して大きな吸収損失を起こし治療効果を減殺する危険がある事が判明した。

放射化については、ハフニウム179が中性子を捕捉して生成するハフニウム180が半減期42.3日、ベータ線の崩壊エネルギー1MeVとかなり強い放射能を局所で数か月に渡って放出するため、患者の被曝も医療担当者の被曝も無視できない。

対策としては、ジルコニア補綴物を照射前に除去する、除去不可能な場合には照射方向を留意する、中性子を吸収するシールドを設置する、等が考えられる。

(文:窪田 敏之)

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