2010年4月23日金曜日

広州の歯科医、エリック・チン(秦)先生とその診療所

広州市は長い歴史のある貿易港だ。中でも広州東駅周辺は外国企業などが多数進出している。この地域にある天河北路のホテルの11階にある

凯怡牙科诊所(Kai-yi, カイイと読むようです)

を尋ねた。

エリック先生はこの診療所で指導的立場で、現在はアドバイザーおよびパート医師として関わっている。この歯科医院はホテルビルのワンフロアを全て使っており、その広さは800平方メートルに及ぶ。

この歯科医院は日本で考える歯科医院とはかなり趣が異なっている。広くてゴージャズな待合室にはシャンデリアとソファーがあり、ドリンクサービスがある。診療ユニットは12台。ただし全て個室で、しかも個室はかなり広い。(おそらく20畳以上の広さ)個別に手洗いシンクを備えている。また相談室、技工室、材料保管室、消毒室、子供用待合室等がそれぞれ配備されている。診療室はGP(一般診療用)が多いが、何室かは矯正用、顕微鏡治療用、インプラント手術用などに専門化している。

治療内容はGP・インプラント・矯正・歯周炎・予防と全域にわたっている。感染コントロールレベルは非常に高く、術前にユニットの主要部をラップで被覆するといった徹底ぶり。

ジルコニアなども、もう普通にやっており、全体的に治療レベルの高さを感じた。

エリック先生との会話の中で、色々中国の歯科事情について理解が進んだ。まず中国と日本の大きな違いは、中国では医科と歯科の区別が無いという事だ。このため歯科を目指す人は医科大学の卒業後、口腔外科・歯科を勉強して歯科になるので、他の耳鼻科・脳外科・眼科・etc.と同じなのだ。

そんな訳なので「歯科衛生士」という職業も今のところ明確には存在していない。これは看護士の中で歯科に興味を持っている人が、歯科の勉強をして「歯科の看護士」になるので、日本で言うところの看護士さんと同じになる。

つまり一元主義だ。これに対して米国や日本は歯科と医科は別々のコースの二元主義だ。これの良し悪しに関しては別稿で論じようと思う。

この診療所の治療料金だが、治療は全て自費で日本と殆ど同じような費用だ。概ね半額から7割ぐらい。食品や公共交通の値段が10倍以上安いことを考えると、これはかなり高価だ。その上保険は適用されず、全て自費なので、それを考えると日本よりもかなり高額感もある。

中でも大臼歯のエンド等は一歯につき7万円と日本の7~10倍の値段だ。地元の先生によると日本から来たお客さん(患者さんの事)のエンドはレベルが低く、殆どやり直しになってしまう上に根尖部の損傷が激しく回復させるのに苦労させられると言う。先方の先生は「日本には健康保険があるので仕方がないんでしょうね」と気遣ってくれたが、全く恥ずかしくて参った。

中国は国全体の経済力はまだ日本には及ばないけれども、高所得層の経済力は既に日本と同等かあるいはそれ以上になっている事もうかがい知れる。

(文:窪田 敏之)

2010年4月19日月曜日

歯科のX線について

今回医療法人化するので、一旦個人の医院を廃業して、再び法人立の医院を届け出る事になる。この時にはX線装置の設置状況も届け出るので、少しX線のおさらいをしてみようとググッってみたら、良い文献があった。

日本大学歯学部 岩井一男先生の「歯科X線撮影における防護Q&A」だ。網羅的に歯科用X線について書かれていて判りやすい。

この中でデンタル一枚では下顎大臼歯が24マイクロシーベルトと大きい。これをデジタルレントゲンにすると機種によっては一桁アップして2.4マイクロシーベルトに低減するので患者さんにとってのメリットは大きいだろう。

最近一部に出てきたCdTe(キャドテル)という物質で作られたX線センサーは更に高感度のようで、これを使用するとX線防護室が不要のパントモを製造できる可能性もあるという。

(文:窪田 敏之)