2013年12月10日火曜日

BNCTにおける歯科領域のケア -歯科材料と中性子ビーム (論文案1)

BNCTは他の治療法が奏功しない悪性腫瘍も攻略可能な強力な放射線治療である。中性子ビーム使用して腫瘍細胞内部で核分裂を惹起して腫瘍細胞を選択的に殺傷し、治癒させる。

中性子ビームには通常の放射線治療で使用されるガンマ線、X線とは異なった性質がいくつかある。一つには拡散の仕方が光であるガンマ線などとは異なることだ。並としての性質が強いガンマ線とは異なり、中性子線はパチンコ玉のような球状の重粒子の束なのでジャングルジムに蹴りこんだサッカーボールのようにあちこちに跳ね返る。

またもう一つの特徴は、最終的に周囲の物質の原子核に吸収され、物質転換を起こすという事だ。ガンマ線ではこういう反応は通常のエネルギー領域では起こらない。

本稿で取り上げるのは、中性子ビームの吸収に伴う物質転換だ。人体を構成する物質、炭素・窒素・酸素・塩素・水素・鉄・カルシウム、etc.に関してはこれらは調べられて評価もされている。しかし歯科領域では人体を構成する物質以外に補綴物やデンタルインプラント等があり、これらの評価は未だ行われていない。特に核変換が発生したときに変換後の各種が放射性だった場合には新規に放射能が発生することになり、これを「放射化」というが、発生する放射能の量によっては害が無視できない可能性もあり、定量的評価が必要である。

そこで本研究では、口腔内に長期で留置されるであろう歯科用補綴物の中性子ビームによる放射化の基礎分析を行い、BNCT施術前にこれらの装置を除去するべきかどうかのプロトコルを提案する。

患者の口腔内に留置されている補綴物は次のようなものがある。

1.可撤性

義歯 アクリル系、ポリカーボネート系、ナイロン系、水晶・アルミナフィラー
金合金・金銀パラジウム合金・コバルトクロム合金・ニッケルクロム合金・ステンレス
チタン

2.固定性

クラウンブリッジ

  金合金・銀合金・金銀パラジウム合金・ニッケルクロム合金
  コバルトクロム合金

  長石系陶材・リチウム系陶材・ジルコニア

  アクリル・水晶・アルミナ系強化プラスチック

インプラント

  純チタン・チタン合金・ジルコニア・コバルトクロム

3.半固定性

インプラント上部構造

このように非常に多岐に渡る。今回はこの中から固定性のコバルトクロム材料と長石系陶材によるPFM冠、金合金による単冠、および可撤性のコバルトクロム製総義歯、もっとも頻度の高いチタン合金製インプイラント材料に絞って分析を試みる。

ーつづく

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