2009年10月10日土曜日

ファイバー・コア

無髄歯の修復前にコアを設定する訳だが、私としては現在このファイバーコアが最も優れていると思う。しかも数年前までの在来技術であるメタルコアと比較すると圧倒的に優れている。窪田歯科で使用しているのはサンメディカル社の i-TFC システムと トクヤマデンタルの ファイバーコアシステムだ。

一番大きな利点は「機械的強度」だ。メタルコアと比較すると繰り返し応力破壊への耐性は30倍にもなる。このような大きな差が出るのはなぜだろう?まず一番重要なのはコアと歯牙の一体性である。ファイバーコアは接着剤が良く効くので歯牙と一体化しており、応力は分散される。また弾性率もファイバーと歯牙は近く、やはり応力分散が起こる。一方メタルコアは剛性が高いので、自分自身はあまり壊れないけれども歯牙に余分な負担がかかってしまい、破折事故につながりやすい。さらにメタルには良い接着剤が少なく、応力分散も異方性が高く、あまり期待できない。このような様々な要素によって、こんなにも強度の差が出てしまうのだ。

また審美性も重要だ。色調が象牙色の半透明なので、人体とマッチして自然観があり美しい。さらに口腔内法の場合にはアンダーカットのある症例にも対応可能となるので、症例の適用範囲が最も広い技術で、変な歯でも効果が出しやすい。

前歯部等でジルコニアの冠による修復と組み合わせると、非常に美しくまるで本物の歯のようだ。うっかりすると本職の歯科医師でさえ「健全」等と判断しかねないほどである。最終補綴物が入った後患者さんに鏡を見てもらうと、虫歯だった歯が真っ白の天然の歯のようになっており、患者さんはビックリして目がまんまるになってしまう。その後嬉しそうににっこりするのだ。

歯医者の仕事はタフだけれども、この笑顔を見られるのであれば、やる価値がある。もちろん治療費をいただかなければ、歯科医院は続かないのだが、患者さんが喜んでくれるというのが、歯科医師にとっての最も大きな報酬であり動機にもなっているのだ。

なかなか補綴の臨床も面白くなってきた。

(文:窪田 敏之)

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