2009年10月21日水曜日

ジルコニアセラミック

ジルコニアセラミックによる歯冠修復は非常に審美性が良い。おそらく現在の歯科医療技術の最高峰であると考えられる。ジルコニアに多少酸化イットリウム(イットリア)を含んでいるものが加圧による結晶変態を起こすことによる耐衝撃性、耐久性を大きく向上させている。

ちなみにその強度であるが、メーカーにもよるけれども曲げ強さで最高では1000MPaを超える。並みのポーセレンが300MPa弱、歯科用の金属でさえ800MPa程度しか行かないのであるから、この材料の強度は驚異的だ。

これならばロングスパンのブリッジを製作しても全く問題はない。ジルコニアの最も優れているのはその色調だ。数年前まではジルコニアはその屈折率の高さを反映して不透明で真っ白だった。もちろん真っ白でも銀色や金色よりは口腔内では遥かに美しい。しかし最近の製品はさらに改良を加え、歯の自然な色になるように色調を合わせてあり、さらに微細なジルコニア結晶を焼結することによって自然な透明度もある程度獲得している。

歯科の臨床でその他の検討すべき点としては接着性がある。ジルコニアは長石系やアルミナス系と比較して接着性モノマーの効きが良く、接着力が高く、さらに経時変化による接着力の低下も少ないようだ。(医歯薬出版 補綴臨床 2008年)これもまた補綴物の強度のアップにつながる。

最後にダメ押しでもう一つ優れた点がある。これは熱伝導率が低く、有髄歯に使用した場合でも知覚過敏が起きにくいのだ。

このようにさまざまな面で圧倒的に優れており、現時点では「究極の歯冠補綴材料」と呼んでも差し支えなかろう。また、これよりも優れた材料は当分の間出てこないのではないかと思う。9歯を超えるような長大なブリッジ以外にはもはやメタルボンドの技術生命は終わりに近づいていると考えている。長大ブリッジもミリングマシンの改良にともなってカバーされるようになるとすると、本当に近日中にメタルボンドは過去の技術になってしまうだろう。

(文:窪田 敏之)

2009年10月16日金曜日

磁石で義歯を補強(マグフィット その1)

磁石を使って取れやすい義歯を取れにくくしようというアイデアは昔からあったが、最近の製品と術式は改良されており、使い易くなっている。

もともと支台歯がある場合にも一定の効果はあり、活用もされていた。しかし、偶々歯冠部が失われた歯に対して磁力吸着点を設定していたので、あまりケースは多くはなかったのだと思う。歯冠部が残っている場合には、在来技術であるクラスプで充分な性能を出せる。

しかし、昨今インプラントのケースが増えてきた。インプラントの場合にはアバットメント装着の前にはどっちみち歯根部しか存在しないのであるから、一気に適用範囲が増える。

実際、顎堤の高さが充分でなく、上の義歯が外れやすくて不便、とか、舌感が悪く話しにくいとか老け込んだ気分になるといった症例では絶大なる威力を発揮する。

義歯は押す力には非常に強いが引っ張る力には弱い。このマグネットアタッチメントは引っ張り力を補強するものだ。

まだマグネットアタッチメントがそれほど普及していなかった時代にマグフィットという磁性アタッチメントを開発し、それから今日のインプラント時代まで、淡々と製品改良を続けてこられたメーカーの愛知製鋼株式会社様には敬意を表したいと思う。

2009年10月11日日曜日

インプラント

インプラントはブローネンマルク先生がオッセオインテグレーション型(骨結合型)を始めてからたぶん40年から50年ぐらい経ったのだろう。ここ10年ぐらいは歯牙の欠損補綴の強力な一手として認知され始めた。

大きな理由の一つはコーンビーム型CTスキャンの普及だろう。歯科用CTスキャンに関しては別途書こうと思うが、三次元で実距離を計測できるようになったメリットは非常に大きい。その昔難しかったのは殆どが歯槽骨や顎骨の形の複雑さに起因していると思われるので、CTスキャンで実際の形状が正確に判るようになるとインプラントはずいぶん簡単な治療という事になってゆくのだろう。

実際、CTのナビゲーション付きだと、インプラントは模型飛行機の製作よりも手技が簡単と言っては言いすぎだろうか?

当院ではスイスのストローマン社製のITIインプラントと日本製のAQBインプラントを患者さんの症例によって適宜使い分けている。それぞれに特徴があるので、両方あると重宝する。

(文:窪田 敏之)

2009年10月10日土曜日

ファイバー・コア

無髄歯の修復前にコアを設定する訳だが、私としては現在このファイバーコアが最も優れていると思う。しかも数年前までの在来技術であるメタルコアと比較すると圧倒的に優れている。窪田歯科で使用しているのはサンメディカル社の i-TFC システムと トクヤマデンタルの ファイバーコアシステムだ。

一番大きな利点は「機械的強度」だ。メタルコアと比較すると繰り返し応力破壊への耐性は30倍にもなる。このような大きな差が出るのはなぜだろう?まず一番重要なのはコアと歯牙の一体性である。ファイバーコアは接着剤が良く効くので歯牙と一体化しており、応力は分散される。また弾性率もファイバーと歯牙は近く、やはり応力分散が起こる。一方メタルコアは剛性が高いので、自分自身はあまり壊れないけれども歯牙に余分な負担がかかってしまい、破折事故につながりやすい。さらにメタルには良い接着剤が少なく、応力分散も異方性が高く、あまり期待できない。このような様々な要素によって、こんなにも強度の差が出てしまうのだ。

また審美性も重要だ。色調が象牙色の半透明なので、人体とマッチして自然観があり美しい。さらに口腔内法の場合にはアンダーカットのある症例にも対応可能となるので、症例の適用範囲が最も広い技術で、変な歯でも効果が出しやすい。

前歯部等でジルコニアの冠による修復と組み合わせると、非常に美しくまるで本物の歯のようだ。うっかりすると本職の歯科医師でさえ「健全」等と判断しかねないほどである。最終補綴物が入った後患者さんに鏡を見てもらうと、虫歯だった歯が真っ白の天然の歯のようになっており、患者さんはビックリして目がまんまるになってしまう。その後嬉しそうににっこりするのだ。

歯医者の仕事はタフだけれども、この笑顔を見られるのであれば、やる価値がある。もちろん治療費をいただかなければ、歯科医院は続かないのだが、患者さんが喜んでくれるというのが、歯科医師にとっての最も大きな報酬であり動機にもなっているのだ。

なかなか補綴の臨床も面白くなってきた。

(文:窪田 敏之)

2009年10月9日金曜日

コンポジットレジン

本日、SHOFUの営業マンが来て新しいレジンを紹介して行った。

「ビューティフル フロー プラス F00」という製品だ。このF00が重要らしく、以前の製品でF02とかF10というのがあるらしい。

この製品の特徴はフローでも流れない事で、シリンジから直接か洞に充填しても流れない。また咬頭の形成などにも流れないので向くようだ。曲げ弾性率は10GPa 曲げ強さは 126MPa とADAの「臼歯部用コンポジットレジンに必要な最低強度 80MPa」の基準値を余裕で超えているので、奥歯に詰めることもできる。

強度が高めなのと、「流れない」という操作性の良さという特徴があるので、当院でも試しに使用してみることにした。美しい修復をするために通常の色調ではなく、ホワイトニングが進んだ患者さんの歯の色にも合わせられるようにBW(ブリーチングホワイト)、およびエナメル質の半透明性を表現できるInc(インサイザル)、あとは最近増加中のA2O(ヴィタ・シェードA2のオペークタイプ。他社ではこれはAO2という色調名称のこともある)の3本を注文してみた。さて使ってみるのが楽しみだ。

(文:窪田 敏之)

ご挨拶

歯科医療に携わって25年以上。その間に得た知見を書き留めておこうと思います。また最新の歯科治療についての文献的研究などもここで行いたいと思います。

このブログは歯科医療関係者、および医療関係者の専用ブログにしようと思います。もちろん専門外の方も歓迎しますが、基本的に医療関係者を対象としている事から、専門用語等を使用しますし、表現方法なども一般の方々には少々判り難い点もあるかもしれません。しかし、質問は歓迎いたしますのでよろしくお願い致します。

(文:窪田 敏之)