2011年7月26日火曜日

臼歯の歯冠修復の決定版 フルジルコニア(FZ冠)

最近フルジルコニア冠(FZ)が徐々に受け入れられてきたようだ。これは今までのジルコニアがメタルボンド冠のフレーム部分を金属からジルコニアに変更したのとは異なって、冠全体をジルコニアで製作する構造だ。

セラミック中史上最高の機械強度を誇るジルコニアセラミックなので、当然ながら口腔内でも頑丈極まりなく優れた臨床結果を出すであろうことは、ある程度予測がつく。

FZの利点は

1.頑強
2.生体毒性が無い
3.メタルフリー
4.技工料金が安い
5.高強度材料なので歯牙の削除量が少なく低侵襲
6.熱伝導率が低く知覚過敏を予防する
7.超高強度のため遊離端、犬歯誘導、ブラキサー等の難症例でも適応
8.同じくロングスパンブリッジも可能

とどちらかというと良い事尽くめだ。しかしFZといえども万能ではなく、利点=欠点にもなりうる。

フルジルコニアで懸念されるのは次のような点だ。

1.硬すぎて調整が大変 →カーボランダムポイントのほうが削れてしまう!
2.色調が白すぎて調和しない
3.対合歯を磨耗させるのでは?

解決法は次の通り。

1.デンタルソリューション社のZIMO Smartなど、被削性を向上させた製品を使用する。現在市場を見渡しても高被削性ジルコニアセラミックは今のところ世界でもデンタルソリューションのみが供給しているようだ。またデンタルソリューション社の技工士はハリウッドのような非常に競争の激しい地域からも受注しており、技工士の練度が非常に高い。このため技工物の精度も非常に高く調整は多くない。また無調整のセットが可能なことさえ多い。

2.これまで金属で修復していた臼歯部の修復を中心に取り組む。確かにFZはパール光沢で白すぎるなど、審美性は多少ポーセレンよりも劣る。しかしセラミックの白色は金属の灰銀色よりは全然マシだ。またジルコニア自体の内部ステインや外部ステインといった技術で前歯部でも患者さん目線では満足できる程度のものが製作できる。実際に当院でも2番3番には使用しはじめている。

3.デンタルソリューション社製FZ冠はジルコニア粉末の粒度をナノサイズまで細かくした専用グレードのジルコニアブロックを使用しており、対合歯磨耗性は高くない。また補綴学会でも表面を滑沢に仕上げたジルコニアの対合歯磨耗性は通常のポーセレンと変わらないという発表がある。

接着合着には補綴臨床誌の記事に発表されたジルコニアに対する接着データを参考にしてクラレ社製「クリヤフィルSA」を使用している。

当院では昨年より取り組んでいるが患者さんの満足度は非常に高いようで、FZ冠で治した人たちはみなニコニコしている。



右上顎3・5番支台歯、4番ポンティックがフルジルコニアによる審美ブリッジ 40代女性

(文:窪田敏之)

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